商研テクノ株式会社と株式会社テクノソルートラボ、それに佐賀大学と大阪府立大学との共同研究が完成しました。

目的

水や海水から効率よく重金属物質を取り除く商品を作る

結果

セシウムと鉛については世界最高水準の性能。
ストロンチウムとカドミウムは標準的な性能。
残念ながらヒ素は吸着しない。

特徴

材料は一般に手に入るもので化学薬品はつかいません。
海水中でも80%程度の性能を維持します。
形状は使いやすいセラミックボールです。
水中に於いて形が崩れません。
一度吸着した金属イオンは吸着剤を粉々に粉砕しても再放出しない。
ゼオライトのようにヘドロにならないので最終処分が容易です。 価格が安い。

おもな用途

セシウム ストロンチウム 原子力関連
カドミウム 水質改善
鉛 バッテリーのリサイクル施設
硬水の軟水化

吸着材ブラックホールの特性と吸着性に関する技術報告

要点を抜粋したものです。

4)走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Micrograph)による組織観察

Fig.4にBHの破断面のSEM像を示す。

Fig.4 BHの内部組織SEM像
5.BHの吸着実験及びその結果
1)吸着実験

実験はビーカー中に所定溶液を入れ、吸着材を乳鉢で顆粒状に解砕し投入、溶液pHを0.1mol-HNO3により弱酸性となるように管理した。混合した溶液は室温下、マグネティックスターラーにより攪拌し、サンプリングは所定時間毎にマイクロシーブ付きシリンジで5ml抽出し、Cs+についてはイオンクロマトグラフィーにて、Sr2+、As3+、Cd2+、Pb2+についてはICP発光分析により濃度を求めた。

なお、ICP発光法ではAs5+の検出はできていない。

また、溶液初期濃度については分析装置の測定仕様により、軽元素では10ppm、Asや重金属イオンでは50ppmとしたので、それに応じてサンプル使用量も呼応させた。

2)Cs+イオンの吸着性

10ppmCsClによる標準液を用いた吸着実験より得られた結果をFig.5に示す。

Fig.5 室温25℃でのCsイオンの吸着特性 (イオンクロマトICA2000計測)
3)Sr2+イオンの吸着性

10ppmSrCl2による標準液を用いた吸着実験の結果をFig.6に示す。

Fig.6 室温25℃でのSrイオンの吸着特性 (ICP発光分析ICPE8100計測)
4)As3+イオンの吸着性

50ppmAs2O3由来標準液を用いた吸着実験の結果をFig.7に示す。

Fig.7 室温25℃でのAs(Ⅲ)イオンの吸着特性 (ICP発光分析ICPE9000計測)
5)Cd2+イオンの吸着性

50ppmCd(NO3)2由来の標準液を用いたCd2+イオンの吸着実験の結果をFig.8に示す。

Fig.8 室温25℃でのCdイオンの吸着特性 (ICP発光分析ICPE9000計測)
6)Pb2+イオンの吸着性

50ppmPb(NO3)2由来の標準液を用いたPb2+イオンの吸着実験の結果をFig.9に示す。

Fig.9 室温25℃でのPbイオンの吸着特性 (ICP発光分析ICPE9000計測)

6.実験結果の考察

2)イオンの吸着材能に関する考察

①イオン吸着において、CsイオンとPbイオンの吸着性能に優れていることが伺える。Csでは分配係数は104(ml/g)程度と見積もられ、Pbイオンについては鉄系吸着材の約5倍以上の吸着量が推計されることから、BHの特徴と言って過言ではない。これは使用したゼオライト一種であるMordeniteの持つ細孔径が0.6-0.8nm程度とされており、Cs+のイオン半径が0.2nm、Pb2+が0.64nm程度とされていることより、細孔の中に効率的に取り込まれて吸着除去されたものと理解される。

②SrイオンおよびCdイオンについては吸着量としては低値である。これはイオン半径がSr2+ 0.2nmとされているが、Sr2+では水を引き付ける力が強く水和半径が0.4nm以上と大きい2)ためと考えられる。またCd2+はイオン半径が0.8nmとMordenite細孔に比して同等程度かそれ以上であり、細孔に入りにくく吸着効率が低いためと説明される。しかしながら比較的安価になることが想定されるため、使用量を増量することで競合品と比較しても実用的な能力確保が可能であろうと推察される。

③As(Ⅲ)イオンについては実効的吸着能のあることは認められないと判断した。詳細は報告書3)に譲るが、As3+は材料表面の水酸基とイオン交換し一時的に吸着されるが、永久電荷を付与されるものではなく、表面の僅少な溶解作用等により再び溶液に放出されると推察される。

7.まとめ

2)BHはCsとPbイオンについては優れた吸着性能を有しており特徴と言える。

3)SrやCdイオンについては実用性確保のために使用量増量が必要であろう。

 4) As(Ⅲ)イオンに対しての吸着能は発揮できていないので改善が必要である。

<その他付記事項>

本検討は、商研テクノ株式会社 庄原工場にて試作、㈱テクノソルートラボ 大阪研究室にて実験、分析、評価を実施したものである。

実験に際しては大阪府立大学 工学部 中平研究室、高砂工業株式会社のご協力をいただきましたこと付記します。